SHIGEYUKI MITSUI

ASICS Tiger VOICE vol.1

 

 

アシックス/イノベーション・ワークス・ラボ マネージャー

三ツ井滋之

Asics Tigerを履き、遊び、自分を表現する。そんな人々を、ジャンルを越えて紹介する、「ASICS Tiger VOICE」。

今回登場するのは、アシックスのシューズデザイナーとして、1986年の『αGEL』の誕生に立ち会い、その後、いくつものマスターピースを手がけてきた三ツ井滋之氏。

開発者の視点から見た『ゲル』の可能性、アシックスタイガーの未来を、語ってもらった。

 

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出会ったとき、ビビビと来た。

 —『αGEL』という素材に出合った時の、第一印象を教えてください。

三ツ井滋之(以下 三ツ井):私がアシックスに入社したのが、1984年。新入社員だった頃、当時の上司や先輩が集まって、「すごい素材が出てきた」と言って、『αGEL』を一緒に見ました。 

シート状の『αGEL』の上に卵を落としても割れない、そんな見たこともない素材を目の当たりにして、やっぱりちょっと、ビビビと来たのを、今でも覚えています。

—その後、どのようなプロセスで、『αGEL』搭載のシューズを作っていたのでしょうか?

三ツ井:当時のアシックスでは、ウレタン・スポンジを超える、新たなクッション素材を探していて、まさにそのタイミングで現れたのが、『αGEL』でした。

私が最初に所属したチームでは、後に北米市場で発売されるGT Ⅱをデザインしていました。その際の試作品づくりは、自分に任されたので、必死で取り組んだことを覚えています。

ただ、当時の『αGEL』はシリコーン製で、それはイコール「接着しにくい」という難点がありました。そこで試行錯誤の末に、ソールのスポンジの中にパックした『αGEL』を埋め込むというブレイクスルーにたどり着きました。この瞬間、『αGEL』搭載シューズの実用化が、一気に現実味を帯びてきました。

 

1986年、『αGEL』搭載シューズ、発売。

—1984年の開発スタートを経て、1986年に『αGEL』搭載シューズが発売された当時の反応は?

三ツ井:私が所属するチームで開発したGT Ⅱは、北米市場で。それとは別にフリークスαというシューズが日本市場で発売されました。

ランニング先進国だったアメリカの、しかも都市部のイノベーティブなランナーは、この新しいテクノロジーに、すぐに反応しました。素材として「今までにないもの」だったことと、そのテクノロジーが「今までにないクッション性」だったことで、当時はすごい話題になったのを覚えています。

—海外から話題に火がつくというのが、ユニークですね。

三ツ井:そうですね。日本市場では「アシックス=日本のブランド」というイメージが強いですが、新しいシューズを世に出すと、実は日本以上に、海外発信で、話題が広がることが多いですね。それは、『ゲル』だけじゃなく、先日復刻したアシックスタイガーでも、同じことが言えると思います。

 

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日本と欧米のシューズデザインのスタンスの違い。

『ゲル』を搭載したシューズの中で、デザイナーとして一番思い入れがあるのは?

三ツ井:やっぱり、GEL-LYTEⅢですね。発売から25年以上たった今でも、たくさんのファンがいるし、しかもそれが、カッコよく履いてもらっていることが、すごくうれしいです。

GEL-LYTEⅢのデザインで、こだわっているポイントは?

三ツ井:シューズとしてハイスペックであることはもちろんですが、デザイナーとして妥協したくなかったのは「どんなスタイリングにも合わせられる」という点です。

シューズを後ろから見てもらえると、GEL-LYTEⅢは他のシューズとくらべて、シルエットが少し細めです。スリムにしながら、安定性は犠牲にしない。ファッション性を高めながら、機能性も高いというのが、GEL-LYTEⅢですね。

 

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未来の『ゲル』、未来のアシックスタイガー。

—誕生から30周年を迎える『ゲル』の、今後の可能性は?

三ツ井:『ゲル』については、今後もアシックスのシューズにとって、無くてはならない存在であり続けると思います。その感覚は、30年前のローンチのときから変わっていません。

今も進行形で機能の進化を続けている素材なので、デザイナーとしても、それをどうファッションの文脈で料理するか、チャレンジし続けていきたいと思います。

—今の、アシックスタイガーのユーザーについて、どのような印象を持っていますか?

三ツ井:今アシックスタイガーを履いてくれているストリートの子って、流行とは別の価値観で生きている人たちだと思います。地頭はいいけどガリ勉じゃなくて、誰よりも遊んでいて、一番モテるみたいな(笑)。

彼らはきっと、「何かを所有すること」よりも、そのツールを使って「何をするか?何を表現するか?」を実践している、まったく新しいジェネレーションです。

自分のものさしで、自分のスタイルを表現している世界中のスニーカーヘッズたちが、いち早くアシックスタイガーに注目してくれてることは、デザイナーとして、すごく誇りに思います。

 

ASICS Tiger VOICE vol.2

MOTOFUMI "POGGY" KOGI

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